技術をマネタイズする。特許やノウハウを資産化する事で、開発を儲かる事業に変える経営者
伝統とテクノロジーを融合し、ものづくりの未来を更新している企業がある。 株式会社ウイテン代表取締役の内山貴文は、家業である内山製陶所を継ぎながらも、伝統産業の課題を知財やノウハウによって解決するエンジニアとして注目を集めている。 伝統産業の課題は広い世界でも共通の悩みである。その信念のもと、彼は陶器産業に革新をもたらしてきた。3Dプリンターによる石膏型の再現技術、耐熱陶器の新素材開発、撥水セラミックコーティング──。 これらの取り組みは、単なる技術革新ではなく、「100年先に当たり前に使われる技術」を目指す長期構想の一部である。
家業から見えた「危機」と「使命」
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内山が生まれ育ったのは、萬古焼の窯元が並ぶ三重県四日市。幼少期から家業の工場で職人と一緒に土鍋を作った。 家業が不況になる中、会社と業界の抱えるリスクが顕在化してくる。その一つが萬古焼の製造を支える“石膏型づくり”が、わずかな熟練職人の手に依存しているという現実を知ったのだ。「もし彼らが引退すれば、技術は途絶える。原型を失えば再現は不可能になるかもしれない。」 その危機感こそが、すべての原点になった。職人のノウハウをデータ化するという安直な発想ではなく、製造のプロセス自体を作ってしまう構想である。職人に依存していた形状を3Dプリンターを使う事で再現できるシステムを構築した。この取り組みが特許を取得し、三十三銀行ビジネスコンテストでの受賞へとつながる。 「技術を使って、伝統を未来へ残す」――。 その想いを胸に、2022年、株式会社ウイテンを設立した。
プロダクトアウトとマーケットインの間を作る
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ウイテンが開発した3D石膏型技術は、製造現場の常識を塗り替えた。従来、職人の手作業で約2カ月かかっていた試作工程を、わずか3日間で再現。さらに原型をデータとして保管できるため、同品質の再現を何度でも実現できる。 この技術は陶器産業だけでなく、低融点金属や樹脂製品など、型を必要とする多様な分野への水平展開が可能だ。「速さと正確さを両立することで、職人の技を未来に残す仕組みがつくれる」と内山は語る。 また、主要原料であるペタライト(リチウム鉱物)の価格高騰を受け、代替原料の研究開発にも着手。試行錯誤の末、溶融シリカで作る耐熱粘土と撥水セラミックコーティングの組み合わせにより、既存設備を活用しながらも、コストと品質を従来以上の水準で両立させた。 この製品は原料高騰後の3か月以内にサンプル製造まで行い、大手ホームセンター2社に採用され、市場で高い評価を得た。大事なことは、新たな技術のプロダクトアウトとお客様の求める水準であるマーケットインを如何に繋ぐかである。開発・製造・営業の全てを提供出来る事が強みである。
「特許を眠らせない」──研究と事業の融合
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日本では、せっかく取得した特許が事業化されず“眠る”ケースが多い。しかし内山は、その構造を根本から変えようとしている。 ウイテンでは、研究・開発・製造・販売・知財運用までを自社で完結させ、特許を“動かす”仕組みを自社で構築。単に特許を取得するだけでなく、そこから事業モデルを設計し、実際の収益に転換している。 「発明を社会に実装してこそ、技術は意味を持つ。特許はゴールではなくスタートラインなんです。」この姿勢が評価され、大学や企業との共同研究も増加。 産学連携プロジェクトでは、耐熱素材や新たな生産プロセスの開発など、新たなテーマにも挑戦している。“研究者”としての好奇心と、“経営者”としての実行力。その両輪が、ウイテンの強さを支えている。
「100年後も使われる技術」を残すために
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内山の現在のテーマは、「技術やノウハウが評価されて、稼げる仕組みを作る事」である。後継者不足・斜陽産業化は全て付加価値の低下に起因する。技術やノウハウを知財や売れるプロダクトに変換する事で資産化する取り組みは製造業を生業とする人の多い日本で必要な思想である。 「職人の手の感覚、土の匂い、焼き上がりの温度。データや状況の特徴に気づいて、如何に高い付加価値として世に表現するか。」これが継続的な産業を作るための重要な要素になると考える。 さらにウイテンは、開発技術の海外展開も視野に入れている。日本発の技術を世界市場に届け、小さな開発に終わらせない構想だ。 「伝統はその時に継いだ人間が最大限努力して残るものだと思います。」伝統を継ぎながら革新を起こし、研究と経営を横断する。 内山貴文の挑戦は、地場産業の未来だけでなく、日本の製造業全体の希望を照らしている。