インタビュー

INTERVIEW

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マンション管理の“空白市場”に挑む。50歳事業家・廣居義高の戦略

ベタープレイス株式会社 代表取締役 廣居 義高(ひろい よしたか)

リード(事業)

ベタープレイス株式会社は、分譲マンションの所有者で構成する団体「管理組合側」に立つことで役割を認めてもらうという珍しいマンション管理コンサルティング会社だ。 同社は、管理組合の執行部である理事会に対し、運営のDX支援・管理費の最適化・修繕工事の伴走支援などを提供しています。マンション管理会社とは完全に独立した中立の立場を取り、受益者である管理組合側に寄り添う専門サービスを展開している点が特徴だ。 さらに、全社員がマンション管理業界の出身者で構成されており、現場の構造や課題に精通したプロフェッショナル集団であることが同社の大きな強みとなっている。 不動産や建築の専門知識がない管理組合が、管理関連事業者との情報格差で不利にならないようにすること。その不利益から守る役割を50歳での起業を通じて選択したのが、代表の廣居義高だ。

「素人が割を食う」構図を変える

分譲マンションの維持管理の現場には、専門知識の非対称性が常に存在する。管理組合の多くは、不動産も建築も管理に要する費用も工事費用の相場も知らない立場だ。結果として、言われるままに高額な工事を受け入れたり、管理内容も管理費用も売り手となる管理会社任せの運営になったりしがちである。 廣居は、この構図を「権利者・所有者が割を食う仕組み」と捉えている。情報を持つ側が、情報を持たない側の無知を前提にビジネスを組み立ててしまう現実があるからだ。 そこで廣居が選んだのは、管理会社でも保守点検会社でも工事会社でもなく、マンション所有者の管理組合に伴走する第三者のプロという立場だった。専門知識と経験を武器に依頼主をコントロールするのではなく、消費者目線の判断材料となる情報と選択肢を示し、管理組合自身が決めて納得が得られるように支援する。 廣居は、プロフェッショナルとは「知識や経験をお金という対価に変えながらも、その土台に依頼主の利益を置ける存在」だと考えている。ベタープレイスが「プロ集団」を掲げるのは、知識の誇示ではなく、その倫理観を共有するためでもある。

変化を恐れず、「強欲」をエンジンの燃料にする

廣居には、座右の銘のように信念のような固定された言葉はないという。大切にしているのは、自身のエゴにもなりかねない信念よりも、状況に応じて考えを変えていける柔軟さだ。変化を怖いものとは捉えず、むしろ変化しないことで取り残されることのほうを恐れている。 働き方についても独自の感覚を持つ。仕事とプライベートを日単位・週単位・月単位・年単位等で分けるワークライフバランスの考え方にはなじまない。人生全体の時間軸で見て、どこで集中して働き、どこで休むか。例えば、二十代でがむしゃらに働き、四十代でその蓄積を生かして少し楽をする、といった長期のバランス感覚で生きている。既にワークとライフを分離して考えるという感覚すらない。 現在では、「休み」という概念自体が大きく変わった。身体の休息、気力体力の回復という意味での「休み」は必要だが、廣居にとっては、仕事そのものがやりたいことになりつつあり、自身にとっての日常は、「24時間、自分の意思で時間を使う状態」に近い状態を手に入れれたという。ちなみに、映画館や美術館に行く時間も、趣味の時間も自分で選び取った一日の一部として存在している。すなわち、ワークアズライフの状態となり、仕事が人生の一部となったそうだ。 廣居が特徴的なのは、お金に対する率直さだ。自分を「物欲も含めてかなり強欲な人間」だと自覚している。欲しいものは我慢して貯金してからとか、準備してからではなく、その瞬間に手に入れる。分不相応な高価な物も、実際には「そのときの体験」に対してお金を払っていると考えている。若い時期に背伸びして買うブランド品や旅行、景色のほうが、その後の人生に与えるインパクトは大きい、という感覚だ。

10期100億、その先に見たい景色

廣居が目指すベタープレイスの近い将来の目標は「売上100億円」だ。在庫を持たず、仕入れも外注費もないビジネスモデルのベタープレイスの主力事業は粗利率が高いコンサルティング型ビジネスでこの売上規模を目指すのは容易ではない。どちらかと言えば足るを知らないバカ者かもしれない。それでも廣居は、あえて大きな数字を掲げている。 ゼロイチスタートの起業10期で100億に届くのか、届かないのか。達成できなければ、足りなかった部分を認め、要因を分析し、次の打ち手を考えるだけだ。目標到達そのもの以上に、「どこまでいけるか」を試すプロセスに価値がある。 マンション管理のコンサルティング事業というニッチで始めたブルーオーシャン(未開拓市場)の事業は、いずれ競合が増え、レッドオーシャン(競争過多の市場)になっていく。廣居は、レッドオーシャンとなることは市場があると認められたことだという。優勝劣敗の戦いには、必ず勝者がいる。勝ち筋を掴むことができるか否かの戦いに入るという。そのとき、求められる潜在的ニーズをいち早く信じて形にしたプレイヤーとして、どこまで戦えるのか。大阪から東京へ軸足を移すのも、その競争の中心で結果を出すためだ。 廣居の根底にあるのは、成長への飽くなき渇望だ。去年と同じ景色を見ることに満足せず、知らない景色を見に行き続けたい。マンション管理コンサルという一見地味な領域で、管理組合の「専門知識の非対称性からくる不利益回避の扇動者」、「マンション管理の主体性を所有者が取り戻す扇動者」という新しい職業像を確立しながら、自身もまた、強欲さと責任感を燃料に成長し続けようとしている。