インタビュー

INTERVIEW

戻る

「資格は“二度目の学歴”」──日本の資格・検定試験インフラを変えた野口の使命

株式会社CBTソリューションズ 代表取締役社長 野口 功司(のぐち こうじ)

 

野口は、日本中の資格・検定を「一年中・どこでも受けられるインフラ」 へ転換した起業家だ。 全国300超のテストセンターを整備し、約400団体・年間300万人が利用。FP技能検定をはじめ国家試験、自治体の採用試験、企業の社内試験にも広がっている。 野口が信じるのは、 「資格は社会人が自分の意思で挑戦できる二度目の学歴」という価値観。地方在住者でも、時間がない社会人でも、公平にチャンスをつかめる社会をつくる。その想いが事業の根幹だ。

9歳の存在意義の問いが、人生の羅針盤になった

野口の原点は、小学3年生の道徳の授業だった。 「人は何のために生きているのか」という問いに答えが出ず、数日眠れなかったという。 数学的に物事を捉える彼には、「自分の存在が長い時間軸で見れば意味を持たない」という結論が一度は浮かんでしまった。 それでも考え続けた末に、たどり着いたのはまったく逆の答えだった。人は、誰かを幸せにする行動によって、自分の存在に意味をつくり出せる。その意味づけの力こそが、人間に与えられた特性だと理解したのだ。 幼い頃から読み込んだ「三国志」も、価値観の形成に影響した。 国や社会の未来に何かを残そうとする人物像に強く惹かれ、 「自分も大義のある生き方をしたい」という感覚が芽生える。この頃に抱いた思想が、のちに経営者という進路を自然に選ばせた。

強者の論理から、父としての視点へ

野口は学生時代から理系の才能で頭角を現し、社会人になってからは外資系IT企業で次々と成果を上げた。当時世界2位のIT企業日本オラクル社でもMVPを獲得し、営業でも開発でも結果を出し続けた。 一方で、高すぎる能力は若い野口を勝つことがすべてという地点に立たせた。他者の能力不足を厳しく見てしまい、自分だけの成果を優先してしまう。野口自身も「当時の自分は決して良い人間ではなかった」と振り返る。 その価値観を根底から変えたのが、子どもの誕生だった。自分や家族の幸福ではなく、「この国を次の世代にどう渡すか」を考えるようになった。少子化、ITの遅れ、失われた30年──社会の構造的課題が鮮明に見えたとき、 父としての責任が思想と結びついた。 ここから、野口の中で強者の定義が変わる。能力があるなら、その力で弱い立場の人を守り、社会の歪みを正す側に回らなければならない。そんな倫理観が、彼の事業と人生の方向性を決定づけた。

試験の形を変える。47都道府県300会場をつくり上げた17年

資格の世界と深く関わる中で、野口は日本の試験制度の欠陥を痛感してきた。紙試験は年1回の開催が多いため、地方在住者は移動に伴う大きな受験負担を強いられる。また、台風などの災害で中止になった場合、振り替え受験ができないケースが多く、主催者側も大量の事務作業に追われる。で中止すれば振替もできなく主催者側も大量の事務作業に追われる。 一方で欧米では、すでにCBT(Computer Based Testing)が普及しており、場所を問わず一年中受けられ、申し込みもインターネットで完結する仕組みが整っている。「日本にこれがないのはおかしい」と野口は考えた。 行政に提案しても動かないなら、民間でつくるしかない。こうして株式会社CBTソリューションズが生まれた。ただし、CBTは会場が揃って初めて成立するインフラ。47都道府県すべてにテストセンターが必要で、その整備だけで5年を要した。 全国300超の会場をつくるのは、体力と忍耐が試される挑戦だった。支えになったのは、独立時に開発したプログラム。「プログラムがプログラムを書いてくれる」そんな独自の仕組みを当時作っていた。これにより開発コストを通常の10分の1に抑え、受託開発の差別化で受注を伸ばし、必要な自社製品への開発などの基礎構築を進めていく。まさに「仕組みで勝つ」ための武器だった。
いまや同社のサービスは、

  • 約400団体が導入
  • 年間300万人が受験
  • FP技能検定など国家試験がCBT化
  • 160以上の自治体が採用試験として導入
  • 企業内試験へも拡大

資格が年1回のイベントからいつでも挑戦できる選択肢へと変わった。地方に住んでいても、子育て中でも、仕事の合間でも、人生の可能性を広げられる仕組みになりつつある。

100社100事業へ。日本の未来に「戦える産業」をつくる

企業規模が100億円を超えた頃、野口はひとつの現実を突きつけられた。 一社が成功しただけでは、日本の未来は変わらない。少子化が進み、旧態依然とした産業構造のままでは、日本はあまりに脆い。 そこで野口は、次のフェーズとして「100社100事業プロジェクト」を掲げた。若手起業家に経営ノウハウを伝え、事業の勝ち方を言語化し、同じ志を持つ経営者のネットワークをつくる。それは日本に新しい経済の土台をつくるという挑戦でもある。 野口が育てたいのは、デジタルを理解し、仕組みをつくり、社会に価値を残す視点を持ちながら、誰かを支える側に回れるリーダーである。 若者へは、こう伝える。「51%勝てると思えたら踏み出せ。完璧を待つな」行動し、改善し、勝ち筋を探すことこそが、経営者の本質だと考える。9歳のときに芽生えた「社会に意味を残したい」という想いと、父として持った「次世代のために戦える国をつくりたい」という願い。その両方が重なって、野口の挑戦は今も続いている。