坂口 貴徳さんHISTORY
「相手のために生きる」と決めた日から、すべてが動き出した。
美容業界の常識を覆す、CHAINON坂口貴徳の挑戦
「俺の言うことを聞いてたらええねん」
若き日の坂口は、売上を叩き出し、猛烈なスピードで店長に上り詰めたエース美容師でした。
しかし、成功の裏では、スタッフとの人間関係が破綻し、店内には冷たい空気が漂っていました。
口を利いてくれるスタッフは減り、やがて、全員から無視される――。
それは「売れている」という幻想の中で、最も大切なものを失っていた瞬間でした。
この挫折をきっかけに、坂口は変わり始めます。
「なぜ、うまくいかないのか」。
その問いに真正面から向き合うべく、毎月10冊以上の本を読み漁り、セミナーに通い、経営者たちと対話を重ねる日々。
そこで出会ったのが、「相手のために動ける人だけが成功する」という普遍的な哲学でした。
それまでの自分をすべて壊し、ゼロから人格を再構築する決意――。
笑顔であいさつをする、人の目を見て話す、傾聴する、感謝を伝える。
最初は「演じること」から始まりましたが、次第に行動は習慣になり、習慣は信頼を生み、関係性を取り戻していきました。
換日記のように、スタッフ一人ひとりへ思いを綴ったノートをボックスに入れるという地道な努力も、やがて信頼の扉を再び開く鍵になりました。
美容師はもっと自由で、もっと個性的であっていい
2019年、夫婦ふたりで「CHAINON」を立ち上げた坂口。
そこに敷かれていたのは、これまでの美容業界とは真逆の“プロダクション型経営”という新しいスタイルでした。
「美容師は個性を売る仕事。ならば、その個性を最大限に活かす組織であるべきだ」。
そんな思いから、上下関係やノルマは排除。
店長という役職すら存在せず、スタッフは“仲間”として対等な関係で働き、やりたいことがあれば自ら提案し、ビジネスとして展開できる自由な環境を整えました。
数字よりも“お客様の幸せ”を最優先。
開業以来、会議で売上の話をしたことは一度もないといいます。
「目の前のお客様をハッピーにすれば、自然と売上はついてくる」。
4年間で14店舗、年商10億円という実績に結びつきました。
行動の原動力は「モチベーション」ではない
坂口は語ります。「モチベーションなんて存在しない。あるのは、やるかやらないか、それだけです」。
どんなに忙しくても行動が止まらないのは、“使命感”があるから。
美容業界の未来を変えたいという覚悟が、坂口の原動力です。
美容師の独立理由の多くが「雇われていては稼げないから」という個人主義的な動機である一方、坂口は「組織を守る」「人を育てる」ことにこそ本当の経営の価値があると語ります。
20代の頃、自分の人格を根底から作り替えたように、今度は業界全体の在り方を変えようとしているのです。
美容業界を“人”の力で変えるために
人材こそが企業の資本であり、未来を創る最大のエンジンです。
坂口は早くから歩合給40%を導入し、月給300万円以上という高待遇を実現。それは、「人」に本気で投資してきた証です。
この想いを伝えるために始めたオンラインサロンには、今や270人以上の美容室経営者が集まり、坂口の経験や想いに共鳴しています。
ただのノウハウ共有ではなく、「坂口の物語の一員になりたい」という“ファンダム型コミュニティ”が形成されているのです。
スライムを倒すのではなく、ボスに挑む人生を
坂口の人生は、ゲームのようでもあります。
「スライムばかり倒していても成長はない。強敵が現れるからこそ、武器を磨き、仲間を集め、レベルアップする」。
困難に立ち向かうことを恐れず、それすらも楽しみながら進化していくその姿は、多くの若手経営者に希望と勇気を与えています。
「人」の時代に、覚悟と行動で切り拓く未来
今後は「美容業界を国家産業にすべく、美容を通じて人、街、未来にイノベーションを起こすというビジョンを掲げる」という新たなビジョンを掲げ、さらなる事業展開を準備中。
根底にあるのは、「美容業界に恩返しをしたい」という強い想い。
「人が財産」という言葉を、綺麗事で終わらせないために――。
覚悟と行動で、坂口はこれからも美容業界の常識を、ひとつずつ塗り替えていきます。